
現在日本では、数多くの外国人が働いています。
そのうち約20%は外国人技能実習生といわれており、労働が目的ではなく、日本の技術を学ぶために来日しています。
そういった外国人を自社で受け入れたいと思っていても、制度の概要や条件などの詳しい内容については知らないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、外国人技能実習生と制度の概要、受け入れる際の条件や関連する機関、受け入れ方法などについて詳しく解説します。
外国人技能実習生とは?
制度の概要や受け入れ方式について詳しく紹介
目次
外国人技能実習生とは

外国人技能実習生とは、技能実習という在留資格を取得した外国人のことをいいます。
日本の技術を学ぶために滞在し、受け入れ先の企業で働きながら技術や知識の習得を目指します。身につけた技術は母国に持ち帰り、現地の経済発展に活かすというのが主な目的です。
外国人技能実習生は労働者として扱われ、労働法が適用されることも一つの特徴です。
しかし、外国人技能実習生はあくまで技術を学びに来日しているため、自社の利益のために働かせることはできません。
外国人技能実習生を受け入れる際は、賃金をはじめとするさまざまな面で、最大限の配慮が求められます。
外国人技能実習制度の概要

外国人技能実習制度とは、外国人に日本の技術を学んでもらい、その技術を母国に持ち帰って現地で活躍してもらうことを目的とした制度です。
1993年に創設された制度であり、日本が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技術や知識を発展途上国への移転を図り、現地の経済発展を担う「人づくり」に協力するための仕組みです。
現在日本で働いている外国人の約20%は技能実習生といわれており、実習期間終了後に起業したり、日系企業で重要なポストに就いたりなど、幅広い活躍を見せています。
外国人技能実習生はあくまでも技術の習得のために来日しているため、人手不足を解消するために就労させることは許されていません。
制度の目的に反した行為を防止するため、技能実習法では以下の基本理念が掲げられています。
- 技能実習は、技能等の適正な修得・習熟又は熟達のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行わなければならない
- 技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない
上記からも分かるように、外国人技能実習生を単なる労働力として扱うことは法律で禁じられています。
外国人技能実習生の受け入れを検討している企業は、受け入れる目的やいかにして支援していくかを考える必要があります。
3段階の技能実習

技能実習は事前講習を除き、3段階の期間に分けられています。
外国人技能実習生が日本での生活や仕事に問題なく馴染めるよう、技能実習を最後までしっかり学べるようにこのような形になっています。
各期間終了後に試験が実施され、合格できれば次の段階に移行することが可能です。
ここからは、技能実習の各段階について解説します。
技能実習1号
技能実習1号は、技能実習を目的とする外国人に付与される在留資格であり、入国時に1年間の滞在を許可する滞在カードがわたされます。
技能実習1号では対応職種が限定されており、限定外の職種については、計画を申請することで1年間だけ特別に認められる場合があります。
活動時間の6分の1以上を入国後講習に充てることが求められており、日本語や日本での生活に関する知識、法的保護に必要な情報や円滑な技能の習得に必要な知識を学ばなければなりません。
ただし、入国前の6ヶ月以内に1ヶ月以上かけて160時間以上の講習を既に受けている場合、入国後講習は活動時間の12分の1に短縮されます。
技能実習1号を取得するための要件は以下の通りです。
- 18歳以上であること
- 制度の趣旨を理解した上で、技能実習を行おうとする者であること
- 母国へ帰国後、習得した技能を必要とする業務に従事することが予定されていること
- 従事しようとしている業務と同じ業務に従事した経験がある、または技能実習が必要な特別な理由があること
- 本国の公的機関から推薦を受けて技能実習を行おうとする者であること
- 技能実習を過去に行ったことがないこと
技能実習2号
技能実習2号は、技能の習熟を図るための活動を行うことができる在留資格です。
来日してから1年が経ち、技能検定基礎級(学科試験・実技試験)に相当する技能評価試験に合格、または技能評価試験に準ずる検定や試験に合格することで取得できます。
技能実習1号と同様、対応職種は86種しか外国人技能実習生向けの技能検定試験が準備されていないため、技能実習2号に進むことができる職種は限られています。
技能実習2号へ移行するための要件は以下の通りです。
- 技能実習1号と同一の実習実施機関で同一の技能等についての業務を行うこと
- 基礎2級の技能検定(学科試験・実技試験)またはこれに準ずる検定・試験に合格していること
- 技能実習計画に基づき、さらに実践的な技能等を習得しようとする者であること
関連:よくあるご質問
技能実習3号
技能実習3号とは、技能実習2号の修了後に一定の条件を満たすことで取得できる在留資格です。
技能実習2号から対象職種が減り、80職種145作業に限定されています。
技能実習2号の修了後、技能実習3号開始前、技能実習3号の実習中のいずれかに、1ヶ月以上1年未満の一時帰国が技能実習法で定められています。
技能実習3号へ移行するための要件は以下の通りです。
- 技能検定随時3級または技能評価試験専門級に合格した者であること
- 法令で定められた基準に適合している「優良」な監理団体・実習実施者であること
- 過去に技能実習3号を利用したことがないこと
- 技能検定2級の受験義務があること
外国人技能実習生を受け入れる際の条件

ここでは、外国人技能実習生を受け入れる際の条件を3つ紹介します。
実習実施者の要件
企業で外国人技能実習生を受け入れる場合、特別な資格は必要ありませんが、要件を複数満たす必要があります。
実習実施者が満たすべき要件は以下の通りです。
- 技能実習責任者、技能実習指導員、生活指導員を配置していること
- 技能実習日誌を作成(技能実習修了後1年以上保存)すること
- 技能実習生の住居を確保していること
- 技能実習生の賃金が同業務に従事する日本人と同額以上であること
- 技能実習生を社会保険に加入させること
- 欠格事由に該当していないこと
受け入れ可能人数
外国人技能実習生の受け入れ可能人数には制限があり、取得している在留資格によって異なります。
外国人技能実習生の受け入れ可能人数は以下の通りです。
技能実習1号 | 技能実習2号 | |
---|---|---|
常勤職員の人数 | 受け入れ可能人数 | 受け入れ可能人数 |
300人~ | 常勤職員の20分の1 | 基本人数枠の2倍 |
201人~300人 | 15人 | |
101人~200人 | 10人 | |
51人~100人 | 6人 | |
41人~50人 | 5人 | |
31人~40人 | 4人 | |
~30人 | 3人 |
常勤職員とは、実習実施者によって継続的に雇用されている者のことをいい、既に就労している技能実習生を人数に含めることはできません。
実習の実施期間
前述したように、技能実習は3段階に分かれています。
それぞれ滞在期間が決められており、技能実習1号は1年、技能実習2号は2年、技能実習3号は2年の合計5年が実習の実施期間の限界となります。
技能実習2号までは、試験に合格することで移行できますが、技能実習3号に移行する際は、試験に合格した上で、監理団体および実習実施者が優良認定を受けている場合にのみ移行することが可能です。
外国人技能実習生の受け入れに関係する機関

外国人技能実習生の受け入れにはさまざまな機関が関わっています。
ここでは、それぞれの機関の概要を紹介します。
監理団体
監理団体とは、外国人技能実習生の受け入れを検討している企業から依頼を受け、現地での募集や受け入れに必要な各種手続き、受け入れ先に対する指導や監査などを行う機関です。
非営利団体であり、関係省庁によって認定を受けた場合にのみ、監理団体として認められます。
送り出し機関
送り出し機関とは、外国人技能実習生と監理団体の間にある機関であり、主に外国人技能実習生を監理団体に取り次ぐ役割を担っています。
実習実施者と直接関わる機関ではありませんが、外国人技能実習生のサポートを行っているため、受け入れを検討している企業であれば把握しておく必要があります。
受け入れ機関
受け入れ機関とは、外国人技能実習生を受け入れ、実際に雇用する企業や個人事業主のことをいいます。
受け入れ期間となるためには、前述した要件を満たしている必要があり、定められた義務を果たせなければ認可を受けることはできません。
また、受け入れ機関は外国人技能実習生の雇用だけではなく、出入国在留管理庁に届出を行う必要があります。
外国人技能実習機構
外国人技能実習機構とは、技能実習制度の適正な実施と外国人技能実習生の保護を目的とした組織です。
外国人技能実習生に対する相談や支援はもちろん、技能実習計画の認定や技能実習制度に関する情報の発信、各種手続きの支援を行っています。
地方出入国在留管理局
地方出入国在留管理局とは、法務省の外局である出入国管理庁の地方支部にあたる組織です。
出入国管理が主な役割であり、外国人技能実習生の在留資格認定証明書の交付を行います。
外国人技能実習生の受け入れ方式

ここでは、外国人技能実習生の受け入れ方式を2つ紹介します。
企業単独型
企業単独型とは、外国人技能実習生の受け入れを行う企業が現地の法人や合弁企業、取引先
企業などの職員を直接受け入れ、技能実習を実施する方式です。
海外企業であれば自由に受け入れられるわけではなく、受け入れ先企業との密接な関係を証明できなければ、受け入れることができません。
密接な関係にあると受け入れられる機関は以下の通りです。
- 本店と支店
- 親会社と子会社
- 子会社と子会社
- 受け入れ先企業の関連会社
企業単独型では、外国人技能実習生の受け入れに必要な手続きの多くを受け入れ先企業が行わなければなりません。
団体監理型
団体監理型とは、監理団体が外国人技能実習生の募集を行い、傘下にある企業で雇用契約を結び、実習を行う方式です。
団体監理型では、海外に支店や関連企業がない場合でも受け入れができます。
また、受け入れ可能人数も企業単独型より多く、監理団体によるサポートが受けられます。
企業で外国人技能実習生を受け入れるためには

ここでは、企業で外国人技能実習生を受け入れるために必要な条件を2つ紹介します。
技能実習機構からの許可
監理団体として認められるには、技能実習機構から許可を得る必要があります。
技能実習機構に許可申請を行い、主務大臣の認可を受けることができれば、監理団体として認められます。
また、監理団体には2つの区分があり、特定監理事業と一般管理事業に分けられます。
特定監理事業は技能実習1号および技能実習2号まで監理でき、一般監理事業として認可を受けられれば技能実習3号まで監理可能です。
技能実習計画の認定
外国人技能実習生を受け入れるためには、技能実習計画の認定を受ける必要があります。
認定は外国人技能実習機構が行い、技能実習法の基準に基づいた審査を行います。
まとめ
技能実習制度を活用して外国人を受け入れることで、日本の技術を広めるだけではなく、発展途上国の経済発展に寄与することができます。
外国人技能実習生は人手不足を解消するための労働力ではなく、あくまで日本の技術を学ぶために来日しているため、技術や技能の習得に向けたサポートは欠かせません。
受け入れるためには満たさなければならない要件が多く、企業によっては負担となる可能性があります。
自社で受け入れが容易ではない場合は、各種手続きから外国人技能実習生の支援まで委託できる組織を頼ってみるのも一つの選択肢です。
『アジア技術交流協同組合(ASEA)』では、技能実習生や特定技能外国人の受け入れを考えている企業様をしっかりとサポートします。
配属前の計4ヶ月間に渡って、日本語やマナーの講習や基礎技術の研修など、実習生に質の高い教育を行い、現場で活躍できる人材を配属できるよう取り組んでおります。
詳しくは、お気軽にお問い合わせください。